劇団、本谷有希子の妄想日記

2015年12月30日(水)

出しそびれた年賀状を持って、家を出る。一番近くのポストまで歩いて数分。途中で、門の前にもう立派な門松としめ縄を飾っているお屋敷を見つける。まだ元旦まで二日もあるってのに。でも私には、これが正式な流れなのか、「早すぎるだろう。」と脱力していい光景なのか、分からない。「年が明けてるとか明けてないとか、こだわってるうちは、こんなでかいお屋敷に住めないんだ。」と変な納得をして、通り過ぎる。ところで今年の十月、私は第一子を出産した。それを記念し、我が家の今年の年賀状は、消しゴムハンコで製作した。ちょうどうちにあったナンシー関の『原寸大!生ハンコ集』に、消しゴムハンコの作り方が事細かくレクチャーしてあったからだ。娘の部分が特に気に入ったので、来年のHPの元旦挨拶に使ってもらおうと思いつく。昔から、年賀状に手作りの消しゴムハンコとか芋版を押してくる人に憧れていた。ポストにはがきを投函してから、もう一度、あのお屋敷の前を通って帰る。掲げられた『迎春』の文字に、やっぱり胸がもやもやして、腕の中の娘に「世の中にはねえ、理解できないことがたくさんあるんだよ。」と言い聞かせる。生後二ヶ月の娘は、それにしても私そっくりだ。

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